現役唯一の「松坂世代」となる大ベテランのおねだりは、後輩にやんわりと断られたらしい。ソフトバンク・和田毅投手(40)が26日の全体練習後、侍ジャパンに追加招集された際の千賀滉大投手(28)とのやり取りの一端を明かしてくれた。
「俺のホークスのユニホームと交換してくれと言ったら“それは、絶対にいい(いらない)です”と言われました。帰ってきたら金メダル見せてくれ、とは言いましたね」と笑って振り返っていた。
ポイントは「21」だ。千賀が侍ジャパンで背負う番号は、和田の現在の背番号と同じ「21」。04年アテネ五輪、08年北京五輪代表で、06年のWBCでもプレーした左腕の、新たなお宝ゲットとはいかなかったようだ。
ただ、2人の間で交わされた言葉には、もっと重要なものがあった。千賀は左足首じん帯損傷から復帰直後に追加招集され、異例といえる2軍調整からの仙台合宿への合流。24日の楽天との強化試合では2回2失点で敗戦投手となったように、状態は万全ではない。和田はそんな千賀に、さらりとエールを送った。
「いろいろと周囲が言うと思うけど、調子うんぬんじゃなく、もう気持ちで投げるだけ。そんな周囲のことは気にするな、と。ベストの球を投げれば結果が付いてくる投手。本番で抑えればいいんですよ」
現在の稲葉ジャパンで最年長は柳田、田中将、大野雄、坂本らの32歳。40歳の和田のサプライズ招集はなかった。千賀の招集を少しうらやましそうにしながら、優しくハッパをかけた。
「自国開催で、日本代表のユニホームを着てね。一生に一度しかない。そんな場に、選んでもらえるなんて最高じゃないか。頑張ってもらいたい」。気温計が37度を示した酷暑の中、筑後のファーム施設内で和田は涼しい顔で走り込み、ブルペン投球まで終えていた。千賀は苦しい時、後輩思いの和田のデカい背中を思い返すはずだ。(記者コラム・井上 満夫)
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