「今日は勝ちが必要だった。良いステップだったと思うよ」
文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com アメリカ代表が真価を発揮すれば、『アジアの雄』であるイランであっても敵ではなかった。 デイミアン・リラードは言う。「フランスに負けたことで僕たちは強い危機感を持ち、よりエナジーを出して戦うことができた。激しいディフェンスをして、スペースを上手く突いてイージーバスケットを作り出した。自分たちの運動能力とスキルを上手く出せたと思う。今日のようなプレーができれば、目標を達成できる可能性はより高くなる」 そのリラードは3ポイントシュート7本成功でゲームハイの21得点を挙げた。ただ、活躍したのは彼だけではなく、全員が攻守に持ち味を発揮する快勝だった。アシストは34を記録し、イランから23のターンオーバーを引き出して37得点に繋いだ。ファストブレイクポイントは38。競ったのは試合開始から約3分で、あとはひたすらアメリカのターンが続いた。 ケビン・デュラントはフランス戦からポジションを変更し、パワーフォワードとしてプレー。ネッツでしばしばそうしたように、ペイントエリアを守り、リバウンドを争い、周囲と連動してスペースを生み出しては、チームの攻守を一段階引き上げた。 「フランス戦の2ビッグはオフェンスで少し問題になっていたかもしれない。僕がパワーフォワードとしてプレーすることで相手のディフェンスを広げ、スペースを作り出せる」とデュラントは振り返る。「今日は勝ちが必要だった。僕たちはより自由に、個人技を生かしたプレーからシュートを決めた。良いステップだったと思うよ」 グレッグ・ポポビッチはチームの連係についてこう語る。「34アシストは素晴らしかった。ボールをシェアし、オープンな選手にパスを出すのが良いバスケであることを全員が理解している。もっとも、それは全チームが知っていることで、秘密ではないがね」
リラード「チームUSAとしてさらにまとまることができた」
では、秘密とは何だろうか? それぞれ意見はあるだろうが、デュラントによれば「少しだけワガママにやること」だ。 「継続性は大事で、ケミストリーは良くなっている。だけど、これまでは少しアンセルフィッシュになりすぎていたかな。それぞれがボールに絡んでアグレッシブにやる。そういう攻め方が必要なんだ」 エゴを出せばチームは上手く行かない。スター選手が揃うチームならなおさらだ。ただ、全員が一歩引いてしまっては、せっかくのタレント力を殺すことになる。チームプレーを常に意識しつつ、全員が積極性を失わずに自分の持ち味もそれぞれ出す。バランスを取るのは難しいが、デュラントの言う『継続性』が問題を解決してくれるはずだ。 リラードは言う。「フランス戦の後により多くのコミュニケーションを取ることで、チームUSAとしてさらにまとまることができた。チームとして同じ方向で戦うことができれば、もっと楽しくプレーできるよ」 そしてポポビッチは、こんな言葉で会見を締めくくった。「今は全員がロールプレーヤーであり、我々にヒーローは必要ない」
バスケット・カウント
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