「いじめるどころか他人を楽しませたい」
愛知県弥富市立十四山(じゅうしやま)中学校3年生の伊藤柚輝(ゆずき)くんが刺殺された事件で、逮捕された同級生の加害少年は「いじめられていた」と供述をしているという。動機の解明が待たれるが、伊藤君と加害少年をよく知る地元住民や保護者らはいじめの有無をどのように見ているのか。 【写真4枚】この記事の写真を見る ***
「少なくとも、地元の人間は“いじめがあった”とは信じていないと思います」 と話すのは、現場の中学校に娘を通わせている父親だ。 「自分も十四山中の出身ですが、あの学校は昔から1クラスの人数が少なくて、いじめが起きればすぐ先生が察知して問題になるような学校でした。土地柄、荒っぽいヤンキーとか不良っぽい子がいる中学でもないし、明らかないじめが起これば大人がすぐ気づけるはず。多感な年ごろでもあるので、逮捕された彼の思い込みによるところが多分にあるのではないか、そう思うんです」 そう困惑するばかりだが、伊藤くんと加害少年の双方と面識を持つ地元住民はこうも言う。 「まるで殺されたユズがいじめたみたいに報道されているけど、それは違うと思う。自分の知る限り、ユズは他人に暴力をふるったりけんかをするようなタイプではありません。誰にでもフレンドリーで男女分け隔てなく付き合い、いじめるどころか他人を楽しませたいという気持ちの強い子でした。昨年、ユズが生徒会の執行部にいた時は“学年を超えて皆で仲良くなりたい”と言って、全校生徒を集めた球技大会を提案するなど、とにかくスポーツが好きだった。LINEのアイコンはユニフォーム姿でバッドを振っている写真で、中学は野球部でしたが、小学校時代はサッカー部に入っていましたよ」
「いきなり“うるさい”と怒った」
そのサッカー部には加害少年も入っていた。そもそも二人は保育園から小中と同じ学校に通う幼なじみで、兄同士が友人という間柄だったそうだ。 「二人が通っていた小学校は生徒数も少なく、1学年に男子が10人前後、女子も14~15人しかいなかった。和気あいあいとした学校の中で、二人の関係は距離があったと思います。ユズは明るくて常に同級生の中心にいるリーダー的な存在でしたが、逮捕された彼は大人しくて目立たない雰囲気。登下校の際、道路からはみ出して歩いていたことを注意されると、いきなり“うるさい”と怒ったり、上級生に敬語を使わず、タメ口で話すこともあった。俺は他のみんなと違うというオーラを出していて、少し変わったところがある子でした」(同) 加害少年について、同居していた祖父に尋ねたところ、 「(事件当日の朝)孫が家を出る時に、“行ってらっしゃい”と声を掛けたのが最後でした。元気がなかったかと聞かれても、普段から内気な子でしたから、胸の中にしまっていたのだと思います。そういう性格の子ですので、いつもと変わらないように見えて、こちらも心情まではつかめませんでした……」 12月2日発売の「週刊新潮」では、“いじめ”に疑問を持つ地元住民の証言と、殺害を決意した修学旅行での“事件”について詳報する。
「週刊新潮」2021年12月9日号 掲載
新潮社
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