記者が出会った人々 家屋片付け、祭り準備 前向く
石川県珠洲市は、震度6弱の揺れに襲われた十九日から、二十六日で一週間がたった。地震被害からの復旧が進み日常が戻りつつある市内を記者(29)が回りながら、出会った人々に話を聞いた。(上井啓太郎)午後零時四十分 一連の地震による土砂崩れがあった、正院町飯塚の乙谷衞一(おとやえいいち)さん(74)宅の裏山。震度6弱の揺れの直後は土砂が家の中までもう少しのところまで迫っていたが、ある程度撤去され、二十三日にはさらなる崩落に備えて土のうも置かれた。
家の中の片付けも一通り終わったという。ただ、壁のひびやきしむようになった戸など、自分の手で難しい修理はまだ手付かず。乙谷さんは「それぞれの職人さんに話はしているが、忙しいようだ。雨漏りしている家が優先だろうし、しょうがない」と話す。周辺には、雨漏り防止のため屋根にブルーシートを掛けている家もまだ目立った。
午後一時半 飯田町の「栄町三区ふれあいセンター」前では、七月二十、二十一日の飯田燈籠(とろ)山祭りに向けた準備が始まっていた。コロナ禍のため二年連続で中止となったが、今年は開催予定だ。この日は、山車(やま)の車輪にかませて止めたり方向を変えたりする「てこ棒」を作った。山から持ってきたアテ(能登ヒバ)を、二メートルの曲がった棒に整える。三〇度を超える暑さの中、栄町町内の十五人は交代で休憩を取りながらアテの皮を削った。
栄町祭礼取締役の岡田拓磨さん(30)は「地震への不安はそれほどない。三年ぶりなので、今までの分を楽しんでほしいというのが一番」と語った。作業に参加した祭り燈籠山部会長の田中薫さん(50)は「世の中、コロナがあったり地震があったりしたが、飯田の人間にとっては欠かせない祭りだ。準備をしっかり整えたい」と意気込んでいた。
午後三時八分 一週間前の地震発生時刻、記者は上戸町の宿「さか本」で働く坂本菜の花さん(22)を取材していた。強い揺れで障子が外れ、壁にひびが入ったのを覚えている。宿を再び訪れて坂本さんに聞くと、地震による宿のキャンセルはなく、むしろ常連客などから大丈夫かと確認の電話が多く寄せられたという。坂本さんは「地震がいつ起きても大丈夫なよう、気を付けないと」と話した。
午後四時半 強い揺れで一部が崩れた同市宝立町鵜飼の見附島。島の近くまで続く石の道は、まだ渡れない。少しずつ日が沈む中、カップル数組が浜辺から写真を撮っていた。ベンチに座って妻の貴子さん(58)とゆったりと島を眺めていた大津市の会社員山口弘樹さん(59)は「崩れたとネットで見たが、思ったよりは大したことがなくて良かった」と笑顔を見せた。
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二十六日も珠洲市内で震度1を観測する地震が三回あった。いずれも車で移動するなどしており気付かなかったが、まだ地震への注意が必要なことを思い知らされた。専門家は地震の収束は遠いと話しており、今後も警戒は続く。
珠洲で震度1
石川県珠洲市正院町で二十六日、震度1の地震が三回あった。午後三時四十八分ごろと午後五時二十三分ごろ、午後九時四分ごろに観測。金沢地方気象台によると、震源地はそれぞれ富山湾と能登半島沖、能登地方で、震源の深さはいずれも約一〇キロだった。地震の規模を示すマグニチュード(M)は2・8と3・0、2・6と推定される。震度1以上の地震を観測したのは今年に入り百十回目となった。関連キーワード
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