ドイツ滞在中にiOSの書籍出版と出産を経験
――まずは現在のお仕事についてお聞かせください。
2016年2月よりマネーフォワードに入社し、当初はお金の見える化サービス「マネーフォワード ME」を担当していました。エンジニアとして入社したものの、プランナーを経由してプロジェクト管理などマネジメント業務を担当するようになりました。その後、2年前からサービスの共通基盤を開発するアカウントアグリゲーション本部に異動し、現在は部門の責任者として携わっています。
――はじめからエンジニアを志されていたのですか。
そうですね。大学では音声や画像の研究をしていました。その延長線上でソニーで組み込みエンジニアとして入社し、ワイヤレステレビのミドルウェアやドライバなどを担当していました。
7年少々勤めていたのですが、夫の海外転勤が決まったため退職し、帯同してドイツに行きました。はじめの2年ほどは、生活の質をあげるためにもひたすらドイツ語の勉強に励んでいたのですが、その後iOSのSDKが公開されたのを機に、個人的な趣味で開発をはじめました。当時リリースしたローン計算アプリ「iLoan Calc」は現在も開発を継続しています。
そして、一つ大きな転機になったのが、2012年に『iOS 5プログラミングブック』を共著で執筆したことです。声をかけていただいた時は、いつか本を書きたいと思っていましたし、ちょうど長女を妊娠していたこともあり、出産後に同じチャレンジができるかも分からなかったので、思い切ってやってみることにしました。出産と出版がほぼ同時期でしたね(笑)。子どもが8カ月の時に日本に帰ってきたのですが、子育て時期はフリーランスとしてiOSアプリの開発を続けながら、共著や単著で本を書くという日々でした。
――ドイツにいながら、どうして日本の本の執筆やiOSアプリの開発などができたのでしょうか。
私がiOSに取り組み始めたのは、SDKが公開されて間もない頃だったので、当時はiOSのプログラマー自体が珍しかったんです。だからTwitterで受発信するうちに、何となくコミュニティができるようになりました。その中で本の執筆も依頼をいただいたんです。「ドイツで、しかも妊娠・出産のタイミングとも重なり大変だったでしょう」とも言われるのですが、個人開発を始めたのも、初めての出産・育児もドイツだったので、日本だったらどうだったかと比べることもできず、当時は「そういうものか」と思っていました。
8年間のブランクを経て、マネーフォワードにエンジニアとして入社
――大変だったとは思いますが、育児を経て会社員に戻られることにされたきっかけや心情の変化についてお聞かせください。
子どもが8カ月の時に日本に戻り、就職するか悩んだ時期もありました。でも、子どももまだ小さいし、日本での生活の立ち上げがまだだったので、やりこなせる自信が持てなく、就職は諦めてフリーランスとして仕事を続けていました。夫は出張が多かったので、気がつけば何日も子どもと二人きりになることもあり、大人と話すことがほとんどない中で、精神的にも少ししんどくなってきて、ある日笑顔が消えていることに気づきました。それは子どもにも、自分にも良くないことですよね。それで社会と関わりたいと思って、再び会社で働こうと思いました。娘が3歳のときでした。
もちろん、フリーランスとはいえ仕事をしていれば必然的に取引先の人とメールや打ち合わせなどは頻繁に行っていました。しかし、あくまで外部であり、「自分がいる場」ではない寂しさや閉塞感がありました。そして、アプリをたくさん作りたかったのですが、自分だけではできることが限られるので、チームで開発をすることに憧れがありました。
また、もともと自分でもローン計算アプリを開発していたこともあり、ファイナンス系のアプリ開発に携わってみたいと思っていました。そして、ユーザーとして「マネーフォワード ME」に出会って興味を持つようになり、このアプリをもっと充実させたいと強く思うようになりました。実は日本に帰国した直後に就職を考えたときからマネーフォワードには興味を持っていたんです。それから少し時間が空いてしまいましたが、改めてこの会社で働きたいと思い応募しました。
――前職を辞めてから8年が経っている中で、会社で働くことや技術的なブランクは感じられなかったのですか。
違いを感じたことを「ブランクと感じた」と表現するなら、それなりにあります。もともと組み込みエンジニアで、しかも当時はまだGitHubもさほど活性化していなかったこともあり、ブランクを経てWebの世界にきた時は戸惑いはありました。ただ、業界や開発の環境の違いはあるけれど、それが専業主婦やフリーランスの期間があったからなのか、前職から直接転職してもそうだったのか、それとも時代が変わったからなのかはわかりません。
また、技術的なブランクに関してはさほど気にはしていませんでした。それは私がすごい技術の持ち主だからではないです。たとえ技術を持っていても、3年後には廃れている可能性が高いので、たとえ入社した時に技術力が周囲に追いついていなくても、とにかくキャッチアップするしかないと思っていました。新しい技術の前では、自分だけでなく周りの人も皆条件は同じです。たとえ働き続けていたとしても、新しいことに挑戦しなかったり、勉強が面倒になるほうが問題かもしれません。最新情報をいかにキャッチアップできるかが大切だと思っています。
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