2019年にリニューアルされた小林製薬の男性向け「シミ対策(※注1)」スキンケアシリーズ「メンズケシミン」が好調だ。
かつて「シミ対策(※注1)」といえば女性向け商品が主流だった。同社が2004年に売り出した「ケシミン」も女性が主なターゲット。2014年には男性向けの初代メンズケシミンを発売するが、成分はケシミンとほとんど同じで、売れ行きもいま一つだった。
だが、今「メンズケシミン」は男性用クリーム市場で5年累計売り上げナンバーワン(※注2)になった。そのヒットの裏には、独自の発想力を持つ研究者と、熱く粘り強いマーケターがいた。
男性シミと女性シミの違いの秘密を世界で初めて解明
「もしかしたら、男性のシミと女性のシミには、発生のメカニズムに違いがあるのかもしれない」
初代メンズケシミンが発売されて間もない頃、研究開発部スキンケア開発グループの恒松希(のぞみ)さんは、そう感じていたという。
大学院で農学を学び、2007年に中途入社。以来、ケシミンの開発に関わり続けてきた彼女。職業柄もあってか、男性のシミを見る度に、女性のシミと何となく性質が違うことを感じ取っていた。
当時、女性のシミに関する研究結果は数多く存在したが、男性についてはないも同然だった。「男性のシミ対策(※注1)にはあまりニーズがない」と思われてきたからだ。
だが、恒松さんは、漠然とした疑問を放置しなかった。原点に立ち返り、チームとともに「男性のシミ」についてさまざまな角度から徹底的に調べてみようと考えた。
まずは20~50代の男性87人の顔写真を画像解析装置で撮影。40代から急に大きなシミができてくることが分かった。同様に20~60代の男女それぞれ100人以上の顔写真を撮り、シミの「濃さ」を解析。女性よりも男性のほうが、シミが濃いことを明らかにした。
シミは通常、紫外線やストレス、刺激を受けて、肌の中に生じる炎症性物質「プラスミン」が、メラニンをつくる命令に変換されることなどによって生じる。開発グループは40~50代の男性の肌を測定。シミのある部分とない部分とを比べたところ、シミのある部分のプラスミン活性が高いというデータを得た。
さらに、シミのない男女の肌のプラスミン活性を比較。「女性に比べて、男性の肌はシミができやすい炎症状態にあると考えられるとの結果だったんです」。恒松さんはそう振り返る。シミのない部分でも、女性より男性のほうが、プラスミン活性が高い。これは世界でも初めての発見だ。
男性の肌に炎症が起こる習慣とは
なぜ男性の肌にはシミができやすいのか。「男性は毎日ヒゲを剃(そ)るし、顔もゴシゴシ洗う。女性と比べ、日焼け止めを塗らなかったり、スキンケアをしたりしない。こうした生活習慣が、炎症が起きやすい原因ではないかと考えました」と恒松さんは語った。
先の研究結果の裏を返せば、男性のシミ対策(※注1)にとって、プラスミン活性を抑えることがより重要になる。そこで、開発グループはメンズケシミンの有効成分を従来の「ビタミンC誘導体(※Lーアスコルビン酸 2ーグルコシド)」から、抗炎症作用のある「トラネキサム酸」に改め、リニューアルするアイデアを固めた。
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一筋縄にはいかないリニューアルまでの道のり
開発グループと一体になり、アイデアを練り上げていったのが、商品パッケージなどの設計を担当する技術開発グループと市場調査やプロモーションを担うマーケティンググループだ。「小林製薬では開発、マーケティング、技術を縦割りにすることなく、同じ『ケシミン・チーム』として、少なくとも毎月1回、議論の場を設けています」と語るのはスキンケア事業部マーケティング部マーケティンググループの松坂厚介さんだ。
リニューアルにあたり、有効成分ばかりでなく、「どんなパッケージならば男性に商品の魅力を伝えられるか」「いかにドラッグストアや量販店に売り込んでいくか」などについても話し合いを重ねた。
新たな商品を市場に投入するには、社内にいくつものハードルがある。最初の関門は2016年秋。恒松さん、松坂さんらは「有効成分をトラネキサム酸に変えたい」と小林章浩社長に訴え、了承を得た。だが、これは始まりに過ぎない。
ケシミン・チームはその後、男性のシミ対策(※注1)についてのニーズを再調査したり、新商品の塗り心地が受け入れられるかを社内外のモニターに尋ねたりと、さまざまな取り組みを続けた。結果はその都度、小林社長に報告。前へ進める了承を得た。
「やってみようか」。最終的に小林社長のGOが出たのは、2018年秋。最初のプレゼンから、実に2年が経過していた。
2019年2月。40代以降を主なターゲットに、男性のシミ発生のメカニズムに着目した新たなメンズケシミンが、店頭に並び始める。
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苦しい時期を突破した鍵は商談会
「でも、最初から爆発的に売れたわけではなかったんです」と松坂さん。男性の美容意識の高まりを背景に、旧メンズケシミンも徐々に売り上げを伸ばしていたが、同じ市場を有望とみたライバル社も相次ぎ参入していた。
「これは負けられない」。そんな思いが松坂さんたちマーケティンググループを突き動かした。
転機は、ドラッグストアや量販店のバイヤーらが集う商談会だった。「男性と女性では、シミ発生のメカニズムが違うんです。ですから、男性向けに有効成分をトラネキサム酸に変えました」。松坂さんの熱弁に、多くのバイヤーたちが興味を持った。
緻密(ちみつ)で新規性の高い独自研究の結果には、バイヤーたちも納得。たくさんの店舗での取り扱いを約束してくれた。
商品パッケージにも一工夫ある。新たなメンズケシミンのパッケージには、QRコードを載せた。スマートフォンなどで読み取ると、男女のシミの違いなどについて説明した同社のサイトに飛ぶ。「手軽に調べていただけるように、というこだわりです。少しでも多くの男性に、メンズケシミンの良さを知っていただきたくて」と松坂さん。
松坂さんらのこうした熱意と工夫に裏打ちされて、メンズケシミンはじわりと市場に浸透していく。リニューアル後の2019年度、売り上げは7億9千万円、前年度比112%を記録した(出典:インテージSRIデータ)。コロナ禍が続く2020年度も、8億8千万円を見込んでいる(出典:インテージSRIデータをもとに小林製薬予測)。男性用クリーム市場で、5年累計売り上げナンバーワン(※注2)のヒット商品だ。
「予想以上の結果です。でも、男性の美容意識はまだそれほど高くない。どうすればもっとシミ対策(※注1)について考えていただけるか。もちろん、社会人にとって、人間性やスキルは重要です。それに加えて、きれいな肌でいられれば、もっと自分に自信が持てるようになっていただけるんじゃないかと思うんです」と松坂さん。恒松さんも「個人差はありますが、早い時期からのケアをおすすめします」と言葉に力を込める。
男性のメンズケア市場は拡大しつつある。だがそれは、手ごわいライバルたちが、同じマーケットに一層力を注いでくることも意味する。「ナンバーワンはうれしいけれど、怖くもある。今後、10年、20年にわたって、一番でいられるようにしたい」。恒松さんと松坂さんは口をそろえる。同社の挑戦から、しばらく目が離せそうにない。
※注1: 文中の「シミ対策」は、メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐこと
※注2:インテージSRI男性用クリーム2015年6月~2020年5月累計販売金額JANランキングより
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