日本人女性が最も多く発症しているがんは「乳がん」です。19年の乳がん罹患(りかん)者数は約9万8000人で、生涯のうちに乳がんに罹患する女性は「9人に1人」という状況にあります。そして、21年に米国で発表された論文によると、40年の予測では生涯のうちに「7人に1人」になる可能性があるということです。少なくとも自分自身、もしくは自分の身近なところに乳がんの方がいるという状況だということです。

患者数の多い乳がんですが、早期に発見して適切な治療を受けると、治る確率の高いがんです。だから、乳房のしこりなど異変に気付いたら、少しでも早く受診することが大事になります。もちろん、しこりがすべて乳がんというわけではありません。たとえば、生理前にしこりがあるときは、生理が終わってから再度チェックをします。生理が終わってもしこりがある場合は、受診すべきです。ご家族の方々は、しっかり受診を勧めてほしいと思います。

家族として「検診はちゃんと受けている?」と声をかけるのも大事です。早期に発見すると治る確率が高いので、検診は受けてほしい。日本の乳がん検診の受診率は、50~69歳を調べたデータでは41%。欧米の乳がん受診率は80~90%なので日本はいかに低いかがわかります。欧米諸国は受診率が高いことで、乳がんの死亡率は確実に低下しています。日本も受診率がアップすれば、欧米諸国のように乳がん死亡率は確実に低下します。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆明石定子(あかし・さだこ) 1990年(平2)3月、東京大学医学部医学科卒業。東大病院、国立がん研究センター中央病院、昭和大学病院乳腺外科を経て、22年9月から現職。患者の希望や整容性を考慮した手術・治療に定評あり。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」などメディア出演多数。