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Thursday, June 30, 2022

「肌を極める」資生堂 原点回帰の戦略 - nhk.or.jp

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「肌を極める」資生堂 原点回帰の戦略

ことしで創業150年。売り上げ規模1兆円を誇る大手化粧品メーカー「資生堂」。
この巨艦を率いるのが、8年前に社長に就任した、魚谷雅彦氏です。就任以来、ブランド価値を高める戦略で売り上げを伸ばしてきましたが、コロナ禍で事業環境が激変。この逆境下、大胆な事業の絞り込みと深掘りで反転攻勢を仕掛けています。
次の150年を見据える「原点回帰」の戦略とは?
(経済部記者 茂木里美)

高価格帯に商機

東京・銀座の旗艦店。
主力商品は「高価格帯のスキンケア用品」です。

1本1万円を超えるものがずらりと並びます。
肌そのものを美しくしたいという、いつの時代も変わらないニーズを取り込むことに集中し、国内の業績回復につなげる狙いです。

日本国内に次々、最新鋭の工場建設

一方、ことし5月下旬、福岡県久留米市に竣工した資生堂の新工場。

化粧水などを作る釜がデジタル化され、これまで熟練担当者の経験や勘を頼りにしてきた濃さや粘り気などは自動で調整します。
容器のふたを閉めるのも箱詰めもロボットが担います。

魚谷雅彦社長
「福岡はアジアの窓口。日本発の海外向けビジネスに全社で取り組んでいるので、アジア向けの出荷をしていく拠点という視点で見ると、ここは特に重要」

そう語るのは、竣工式に姿を見せた魚谷社長です。

“日本発”が成長への活路

資生堂は、日本で生産拠点の整備を加速させています。
国内工場の竣工は、この3年で3か所目。

海外事業の拡大を目指す会社が、なぜ日本で生産力を強化するのか。

そこには、魚谷社長が就任以来掲げ続けてきた、成長戦略の根幹がありました。

『世界で戦える、日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指す』

日本コカ・コーラの社長・会長などを務めた魚谷氏が、資生堂の社長に就任したのが2014年。
2012年度には146億円の最終赤字に陥り、外部の視点から老舗企業の経営立て直しを託されました。

マーケティングに精通する魚谷氏が、国内ブランド力の向上とともに柱に据えたのが「メイド・イン・ジャパン」商品の需要を取り込む、生産体制の強化でした。

魚谷社長
「『ものづくりの日本』と言われますが、ブランド価値を高めるためには、安心安全で品質の高い研究開発力を実現できるサプライチェーンや工場、物流がなければお客さんにモノが届かないので、そういったものを全部見直しました。世界でも最先端の技術を活用し、働く人にとっても充実して働いてもらえる環境作りにこだわりました」

100年に1度の危機

計画を前倒しで達成するなど、着実に改革を進めてきた矢先、その環境を一変させたのが、新型コロナでした。

狙っていたインバウンド需要が消え、国内市場も外出自粛などで売り上げが急減。
2020年は、社長就任後で初となる、100億円を超える最終赤字を計上しました。

魚谷社長
「100年に1度の危機が訪れました。これは安穏としてはいられない、もしかすると大きな経営危機につながるかもしれないと。どこで生き残っていけるのかを考えた時、“選択と集中”その言葉以上に、何を本当に強みとするのかまで真剣に考えました」

原点回帰、そして肌へ

そしてたどりついたのが「肌へのこだわり」でした。

創業時の祖業は調剤薬局ですが、明治30年には、すでに化粧水の販売に乗り出していました。
日本女性の間で化粧水をつける習慣がなかった当時は、高級な商品として女性たちの憧れの的でした。

以後、スキンケア商品の開発に力を入れ、化粧品メーカーとして成長していきます。

経営のプロとして会社の強みを突き詰めた魚谷社長は、この原点こそが、世界で勝ち抜く切り札だと決断します。

魚谷社長
「150年の歴史のなかで、一番のメインが何かというと、やはり肌の研究、スキンケアを中心とするノウハウ、知見が世界の化粧品会社のなかでもトップクラスで強い会社なんです。化粧品事業をしっかりを守り、今まで以上に強くすることが資生堂が生き残り、そして今度アフターコロナになったとき成長していくためのステップであると」

新たな目標として「2030年にスキンビューティー領域で世界一」を掲げた魚谷社長。

前述した最新鋭の国内3工場で生産するのは、いずれも中価格帯以上のスキンケア製品です。

また、経営層には権限を大幅に委譲しました。
欧米や中国など世界6地域にそれぞれCEOを置き、スキンケア製品に特化する戦略を世界各地で展開させようとしています。

アメリカの大手ファッション業界紙による、世界の企業の美容関連売り上げランキングで、資生堂は5位。
トップの「ロレアル」や2位の「ユニリーバ」と比べて数倍近い差があり、名だたるグローバル企業の中でどう存在感を高めるかが課題でした。

その答えがいわば、「スキンケアを極めること」だともいえます。

肌に投資を集中、事業売却も断行

一方で、大胆な事業の見直しも行いました。

当時、幅広い層に知られていたシャンプーや、洗顔料などの日用品事業を投資ファンドに売却。
「ドルチェ&ガッパーナ」とのグローバルライセンス契約を終了させました。

多額の広告費がかかる事業を切り離し、主力の「肌」により経営資源を集中させるための、大きな決断でした。

カギは「人材」

原点回帰を成功させるために、魚谷社長がカギになると見ているのが「社員たちの力」です。

そのために、自ら現場を回って社員と交流。
社長就任後からこれまで、海外も含めのべ8万人の社員と対話してきたといいます。

現場だからこそ見える消費者のニーズの変化の兆しをとらえ、次の成長の布石につなげようとしています。

魚谷社長
「お昼ご飯でも一緒に食べながら、下手なおやじギャグの1つでも言う、そうすると笑うでしょう、笑うと心が緩むんです。そして、お客さんがどういうことを言っているのか、みんながどういうことに心を砕いているか、心配しているか、そういうことを聞く。
次の150年たった時、日本発で世界の市場で存在感のある会社にしっかりとする、その基礎を作るのが今の私のCEOとしての使命だと考えてやっています」

スキンケア事業に思い切って舵を切り、2030年に売り上げ2兆円を目指す資生堂。
日本を代表する老舗企業が世界の中でどう戦い、事業を拡大していくのか。

魚谷社長が、日本企業らしい企業のあり方として掲げる「PEOPLE FIRST」の理念の真価が問われそうです。

経済部記者
茂木里美
さいたま放送局
盛岡放送局を経て
5年前から現所属
デパートやコンビニなど
流通業界を担当

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