高校生の頃、大学受験のために通っていた塾。駅から塾へと向かう道筋には、いつも同じおじいさんが立っており、何かの雑誌を売っていた。その姿を不思議に思い雑誌名を検索してみると、ホームレスなどの生活困窮者を支援するために発行されているものだと分かった。雑誌販売を仕事として提供し、収入の一部は販売した本人のものになるという。
その仕組みを知り、自分も雑誌を購入し、少しでも役に立ちたいと思うようになった。しかし人々が足早に通り過ぎる中、自分だけ足を止めて声をかける勇気が私にはなかった。販売者であることを示す赤いジャケット姿のおじいさん。人混みの中ぽつんとたたずむ姿は、そこだけ時間が止まっているようで明らかに異質だった。一歩踏み出せないまま受験を終え、その駅を使うことはなくなった。
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